「少年たち 闇を突き抜けて」総括

「少年たち 闇を突き抜けて」の総括!
ということで、今回のひかるくんが演出した「少年たち」を観ての感想を私なりに書こうと思います。

舞台本編の備忘録兼あらすじはこちら


今回の少年たち、良かったポイントは本当に本当にたくさんあるのですが、一番は「ストーリーがわかりやすい」「この舞台に込められたメッセージがストレートに伝わる」ということに尽きるんじゃないかなと思います。ひかるくんが出演した少年たちは一通り見ていますが、一番わかりやすかったし一番好きな作品になりました。

お話の展開自体は毎年マイナーチェンジしていたものの、すのすと少年たちはずっと「戦争」がテーマになっていて、それはまあ良かったんだけど設定に無理がありすぎてストーリーに没入しきれない部分が多々あったんですよね。
例えば…本国(どこ)の法が適用されたために日本国籍ではないらしいジェシーが強制送還になってそのまま兵役に就くとか、戦場にいるジェシーに会いに11人が再会してみんなで戦場に行くとか(お前ら死ぬぞ)、戦場からテレビ中継するとか。あと細かい設定で言うと、政治犯(阿部くんの役)と殺人罪や傷害罪で捕まった人間って一緒の房にいるんだろうかとか、殺人罪で捕まった人間(渡辺くんの役)が出所後にテレビのプロデューサーになってるとか…他にも色々あったけど忘れました。
こうやって文字で書いてても一体どういうことなんだ…となりますが、本当に当時観劇しながらずっと頭にはてなマークが浮かんでたし、絶対に笑ってはいけない少年たち…と思いながら秋の日生劇場に通っていました(笑)多分演者側も多かれ少なかれ同じこと思ってたと思うんですよね…そうだと言ってほしい。

映画版もまあまあ愉快な仕上がりになってるけど、あれはストーリー展開がえびキス版寄りだったのもあって、すのすと版と比較すると一番話がわかるなーと私は思ったし、ハイ美版は一番原型に近かったからこれをすのすとでも見たかった!!!と思ったぐらいです。これはすのすと少年たちに通っていて、かつハイ美版を観劇した周りのおたくも言ってました。まぁ確かに設定に無理がある部分もあったけど…宇宙猫度は低かったと思うんですよね…たぶん。

あとはジャニーさんがやりたいことをとにかく詰め込んでいた印象で。出演者それぞれ「見せ場」をもらっていたけど、それがお芝居のひともいればパフォーマンスのひともいたりして、割と色んなことやっていました。そういえば闇突きの直後に突然バスケコーナーが始まった年*1もあったな…あれ今でも何でなのかよくわかってないんだけど…何だったんだろうね?
「点」として見る分には良くても、それがちゃんと線で繋がっているかどうかが大事で、繋がってないと途端に「一体何を見せられているんだ…」となってしまうんですよね。いっそのことジャニワぐらいぶっ飛んでてくれたら良かったのになと思います(笑)

余談だけどまだ4人だった頃のHiHi jetが一曲だけ披露して帰っていた年もあったな~。当時9月は帝劇でドリボ、日生で少年たちをやっていたのですが、その年はハイハイがリアルに日生と帝劇を行ったり来たりしていて(すぐそこだからね!!!!!)、ドリボと少年たちに出演していました。本当の話ですよ。

まあそういった、あまりにも無理がありすぎる設定とか唐突感のあるシーンとかが盛りだくさんで、「そうはならんやろ…」な部分が過去作は割とあったのですが、ひかるくんが演出した今作ではそこが全てクリアになっていました。
あくまでも主軸は「少年たち」というミュージカルで展開される物語であって、物語を紡ぐための必要な要素以外は削りつつ、今まで積み重ねてきたことや良い部分はきちんと取り入れられていて。息抜きのシーンもあったけど、主軸から大幅に外れることもなかったので、そのへんのバランスも本当に絶妙でした。

備忘録にも書いたのですが、今回の少年たちで使われた楽曲が全て、正しく「台詞としての役割」を果たしていたこともすごく大きかったと思います。過去作は各シーンとそこで歌われる楽曲の歌詞がちぐはぐなこともあったのですが(僕に聞くのかい?とかまさにそう)、今回はそういうことが全くなくてびっくりしました。
「闇を突き抜けて」も曲の使い方が本当に良かった。「闇を突き抜けて」って文字通り“闇を突き抜ける”のか…とハッとしたんですよね。
観てきた期間が長い分、楽曲に対する先入観が固まってしまっていたのだけど、それをひかるくんが見事に覆していってくれました。あの感覚、本当に爽快だったな…(本当に初日に心の中でそ、そういうことかー!!!って叫んだ)。

先述した出演者の「見せ場」についてもちゃんと話の流れに沿っていたし、それぞれに象徴する楽曲があったのも良かったポイントです。これはメインの出演者が6人と少なく、3対3でわかれていたのも大きかったんじゃないかな。浮所と那須のRivalも、大昇と藤井の約束の歌も、金指と龍我のLoveも、その役が抱いている感情や関係性が伝わってきたし、作品とキャラクターの理解度がより深まったと思います。

演出に関しては私は素人なのでここが技術的にすごい!とかは言えませんが、懐かしい演出もあれば見たことない演出もあって、ひかるくんが今まで培ってきたこととか、海外に行ってインプットしてきたものを、ひかるくんなりの手法で提示してくれたのがわかったので観ていてすごく面白かったです。舞台に対して「演出」という観点で真剣に見ることがなかったのでこちらも新鮮だったし、また新たな楽しみ方を教えてもらった感覚でした。

出演者については、一人ひとりについてあまり詳しくないのでふんわりした感想になっちゃうけど、美 少年のみんなは去年一昨年と比べるとすごく良くなってました。台詞も聞き取りやすくなってたし、あと踊れるグループのイメージがなかったから良い意味で裏切られたな~。
Jr.の子たちもみんな頑張ってたし可愛かったです。プレショーとかOPのシーンのお芝居も、公演を重ねていくにつれてみんな伸び伸びとやってる印象でした。舞台ってこういう変化だったり成長が目に見えてわかるから良いよね。

雑誌とかパンフレットを読むと、ひかるくんに対して「視野が広い」「細かいところまで気を配ってくれる」「一人ひとりを見てくれる」ということを言っていた子が多い印象なんですが、Jr.の子たちの中には今回初めて舞台でお芝居する子もいたみたいだし、特にそういう子たちがお芝居しやすい環境を作ることも、ひかるくんの中にはあったのかもしれないなーと思いました。「自分のことを見てくれてる」ってつまり「大事にされている」ということだと思うんですよね。大事にしてもらった体験ってずっと残ると思うし、今色々と大変な状況の中で現場に立っている人間が若い世代にできることってそういうことなのかもな~…なんて思ったり。ひかるくんがパンフレットで “将来彼らが2023年の『少年たち』を振り返ったときに、「楽しかった」だけではなく、「あの年の公演に出演してよかったな、あそこで自分は変わったな」と思える何かを残してあげられたらうれしいです。”と言っているのは、そういう意味を含んでいるのかもしれません。


さて、先日BroadwayWorldというアメリカの演劇関連のニュースサイトにひかるくんの独占インタビューが掲載されました。
もう読んだ方も多いと思いますが、まだの方は是非。

インタビューを読んで刺さったところをいくつかピックアップしてみます。

“初日の公演を一番後ろで観てた時に、すごい不思議な気持ちになって。(略)率直に感じたのが「自分の葬式を一番後ろで見てる」みたいな気持ちにちょっとなったんですよ。(略)そこで「いやぁ、こうだったね」、「いや、そこってこうじゃない?」ってその話してる答えは全部僕は知ってるんですけど、そのお客さん同士の会話に、僕は視界にも入らないっていう不思議な感覚になって。”

“難しかったところは、やっぱ自分自身を納得させるのですね、一番。(略)自分を「いやこれマジでやべぇじゃん」って思わせられる。(略)自分自身が納得いくところを追求しに行くっていうところが、難しかったし面白かった点でもあるかな。”

“すごい個人的に「うわ、もらったわ。もうこの『少年たち』を俺もらった」って思ったのは、やっぱエンディングとエンドロールの入り方。自分の中で思い付いた時に「やっちゃったね」って思って。面白いし、これを早く皆んなに観てもらって「ああだこうだ」言ってもらった方が、「あぁ、もう大丈夫だね」っていう風に自分自身でなった点、こだわった点は本編ラストの方ですね。”

いやーひかるくんから出てくる言葉というか、発想がすごいとしか言いようがないです。「自分の葬式を一番後ろで見てる」なんてなかなか出てこないよ。
でもそれだけ「少年たち」という舞台に対してあの時ひかるくんが持てるすべてを注ぎ込んだんだろうなと思ったし、「これは間違いなくひかるくんが作った舞台だ」とこちらが感じたのも、ひかるくんの分身と言ってもいいぐらいの作品だったからなんだと思いました。

ラストに関しても答えはあるんだろうけど、その答えにたどり着くことよりも、この舞台を観劇した一人ひとりがあのラストについて「考える」ことが大事なんだろうと思いました。大昇が「観た人に感じてほしい部分だからあえて言わない」と雑誌*2で言っていたのもきっとそういうことなんだろうなと。全部の伏線を回収して綺麗に終わらせることもできたと思うけど、そうしなかったのにはちゃんと意味があると思うし、こちらも思惑通りにあれこれ考えてしまっているので、全てはひかるくんの手の内だったな~…なんか悔しい(笑)。

あとは「戦争」の描き方・伝え方についてもひかるくんの考えを知ることができて良かったです。すのすと版と美 少年版の違いは、演出をした人間が戦争を実際に体験しているかどうかという部分も大きかったのかも?*3と思いました。
すのすと版でも「戦争って良くないよね」とか「平和が一番だよね」ってメッセージを受け取っていたつもりではあったけど、仲間が徴兵されて戦場に行くという設定は「自分事」として受け止めるには少しハードルが高かったなと思っていて。でも今回は「日常である普通の風景が一変する」というお話だったので、観たときにこちらの目線まで「下りてきてくれた」感覚になったんですよね。
伝えたいことは同じだったとしても、視点を変えるだけでこんなに変わるのかと思ったし、伝わり方も全然違うんだなと思いました。

“戦争を経験したことない人間の言葉は、戦争を経験したことない人間にも届く。”
“戦争を経験した人たちには届かないかも知れないけど、自分たちのことを観に来てくれた人たち、自分たちのことを知ってくれている人たちには、僕たちが”戦争っていうものはこうなんだ”っていうのを解釈して、お芝居を通じてでもメッセージを届けられることはある”

私にとって今年の少年たちは、まさにこの言葉の通りの舞台でした。
今回ひかるくんは出演していないけど、ひかるくんがこの舞台に込めたメッセージは、美 少年やJr.の子たちを通してこちらにも届いたし、ちゃんと届いてるよって伝えたいです。


改めてひかるくん、少年たちの演出本当に本当にお疲れ様でした。
すっっっっっっっごく楽しかったー!!!!
ひかるくんが演出を担当するって発表された時から本当に楽しみにしていたんですが、こちらの期待以上に素敵な作品だったし、あらゆるところにひかるくんのこだわりが詰まっていて、そんなエンターテインメントを浴びることができて本当に楽しくて幸せな一か月でした。あまりに楽しすぎて筆不精なのに3つもエントリー書いてしまった…自分でもびっくり(笑)。
またこういう機会があるなら絶対にチャレンジしてほしいし、いつかひかるくんが0から作り上げた舞台が観たいな~そんな日が来ますように。


ということで、「少年たち」に関してはこれで一区切りにしたいと思います。
また思うことがあったらぽつぽつ呟くかもしれません。
ここまで読んで下さった方ありがとうございました!
コメントとか感想がありましたらこちらまでもらえたら嬉しいです。







 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











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おまけというわけでもないのですが、パンフレットや色んな雑誌でひかるくんの名前が出ていた部分を抜粋してまとめてみました。
一覧で見たいなーと思って自分用に作ったものなのですが、興味のある方は下のリンクからどうぞ(笑)
パンフレットから抜粋
雑誌(稽古前に取材)から抜粋
雑誌(稽古期間〜公演中に取材)から抜粋



*1:ちなみに2018年の話なので、刑務所の妖精・大昇が司会してました

*2:Duet  2023年12月号

*3:そもそもジャニーさんの演出がぶっ飛びすぎているというのは大いにある笑