「少年たち 闇を突き抜けて」備忘録(一幕)

Snow Manの岩本照くんが構成・演出・振付を担当した美 少年主演の舞台
少年たち 闇を突き抜けて
の備忘録です。

各シーンのまとめとか気づいたポイントとか、過去作をふまえての感想などなど。
と言っても私は岩本担なのでベースがすのすと少年たちになります。関西版は未見。

今回の少年たちはサブタイトル案やロゴのフォントなどもひかるくんが決めていて、「少」の1画が赤くなっているのもひかるくんのアイディアだそうです。理由としては美 少年のグループ名も「美」が赤だし、HiHi Jetsと美 少年の少年たちの時も美 少年は赤チームだったから赤は残したかった*1、と言っていました。
パンフレットの「SCENE & MUSIC」「Act」「SHOW TIME」の頭文字だけ赤になっているのも、きっとそれを踏襲したんだろうと思います。

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SCENE & MUSIC*2
Act1
オープニング
1  プロローグ・街  ♪時の彼方
2  少年院
3  ブランコの丘   ♪僕に聞くのかい?
             ♪俺たちは上等
4  懲罰房(夜)
5  懲罰房(その後)
6  ボイラー室    ♪Rival
7  作業場      ♪僕に聞くのかい?
             ♪約束の歌~meet you again~
8  刑務所の日常
9  看守長の企み   ♪LOVE
10   刑務所内某所
11   夢の世界
12   闇を突き抜けて  ♪闇を突き抜けて

Act2
13   刑務所内某所
14   脱獄実行     ♪あいつのぶんも生きる
15   看守長失脚
16   出所       ♪君にこの歌を
17   エピローグ

SHOW TIME
アクセントダンス(ジャニーズJr.)
1 Sing it(美 少年)
2 じれったいね(ジャニーズJr./少年隊)
3 単純すぎるラブソング*3内博貴
4 Flicky(美 少年)
5 We'll be together(美 少年 + ジャニーズJr./少年隊)

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配役
赤チーム
岩﨑大昇、佐藤龍我、浮所飛貴、竹村実悟、堀口由翔、木村來士

青チーム
那須雄登、藤井直樹、金指一世、阿達慶、関翔馬、髙橋曽良

看守長/看守
内博貴/千井野空翔、渡邉心
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◆開演前
舞台は紗幕が降りていて、中央に少年たちお馴染みのタイヤのブランコ。開演の20分前くらいから合計3回、ステージにJr.やJAEさんが出てきます。友達と待ち合わせしたり、掃除したり…といった何気ないやりとりが繰り広げられ、舞台への期待感を抱かせる演出になっています。
ムーラン・ルージュでも開演前にアンサンブルさんが出てくるプレショーの演出がありましたが、それみたいだなと思いました。
最後に赤いツナギ姿で登場し、まだ何も育っていない花壇に水をあげる大昇。プレショーで登場するJr.たちは私服姿ですが、大昇だけツナギなので時間軸としてはおそらく本編終了後の設定なのかなと思いました。


Act1
オープニング
歴代少年たちのサブタイトルが紗幕に映し出され、映像が順番にダイジェストで流れます。すのすと少年たちは2015と2016は静止画、2017以降は映像かな?
たぶん2015年だと思うんだけど、黄色?のバンダナに黄色?のマフラーを首に巻いてるひかるくんが映っていて、それ見たことありませんけど!?となりました。あれ一体何なんだろう…ボツ衣装???あと資料用の映像があるならいくらでも払うので売ってくれ!と思った人たくさんいたはず(私のことです)。

その後ひかるくんのナレーション。
初日は音声だけだったと思うのですが、2回目観に行ったら紗幕に文字が出るようになってました。

いつの時代も少年たちは夢を追い、人を愛し続ける
しかし、自由を奪われた少年たちは、争うことでしかその怒りを静めることはできない


1 プロローグ・街
平和な日常のシーン。Jr.達のやりとりが見ていて可愛い!私が観劇した時は竹村がSnow ManのGranduerを踊っていておっ!となりました。
制服姿の大昇が電話でおつかいを頼まれていたり、スーツ姿の博貴(後の看守長)が奥さんから妊娠報告を電話で受けて喜んでいたり、本当にありふれたそれぞれの「日常」が描かれている場面。

突然警報が鳴り、「退屈だけどいつも通りの日々を送っていれば世界は守られると思っていたけれど、それは間違いだった」という大昇のナレーション。その後日本が戦争状態に突入したとの市内放送が入り、場面が急展開します。
ここのBGM、ジャニワのヒンデンブルク号爆発事故のシーンで使われてた曲だったな~。
このシーンは特に台詞はないのですが、爆発音や銃撃の音が聞こえてきたり、Jr.扮する少年たちが逃げ惑い殺されたり、大昇が自宅に帰ろうとして自衛隊に止められる・目の前で自宅が倒壊する様子が繰り広げられるので、観ていてかなり辛かった…。

場面は変わって戦後の街。
配給の輸送車両を襲って北地区(ノース)に持ち帰る計画について相談する那須・藤井・金指の3人。「物資が俺たちまでまわってこない」「餓死する」という台詞があるので、3人が北地区の人間ということと、戦争のせいでろくに食べるものがない状況が続いていることわかります。そこに同じ目的で南地区(サウス)の龍我と浮所たちもやってきて、言い争いののちに輸送車両を襲撃します。

♪時の彼方/全員

少年たちと言えば!なウエスト・サイド・ストーリーみのあるパフォーマンス、時の彼方に乗せて場面が展開するのが面白かった!
少年たちの計画は失敗し制圧され、少年刑務所へと連行。乱闘に紛れて大昇も出てくるけど、おそらくどちらにも属していないのかな。この時点の大昇は記憶喪失ではなさそうな印象を受けたけど果たして。


2 少年院
ここに至るまでの経緯や心境を吐露する那須藤井金指の3人。
戦争が全てを壊した・戦争は2年間続きそして突然終わったけれど、見慣れた街は瓦礫になった・死んでしまった友人達もいる(スマホの連絡先の何人かが死んだ、という言い回しが印象的でした)。戦争に勝者はいない、全員が敗者・生きるために人を傷つけたり食べ物を奪ったりした結果刑務所にいる、といったことが語られます。

過去作の少年たちは、「人を殺した」「親父を刺した」「警察の野郎をぶん殴った」「頭がキレすぎて反政府軍のリーダーだった」「詐欺をした」「放火した」などなど…登場人物が様々な罪を犯していて、そういう子たちが同じ刑務所に集められていたのが解せないポイントの一つだったのですが(しかもみんな一緒のタイミングで出所するし…)、今回はそうではなくみんな同じ状況下に置かれていて、生きるために仕方なくやったという理由だったのがなるほど~!と納得でした。
戦争が起こらず平和な世界だったら、みんなこんなことやってないんだよね。。


3 ブランコの丘
ブランコで遊んでいる大昇と赤チームの囚人たち。そこに看守たちに連れられてやってくる浮所と龍我。この時花道から登場するので、奥行きが感じられるのが良かった。花道がある劇場ならではの使い方。
今までは新入り=日記係だったけど、今回の「新入り」は浮所と龍我の二人だったのが過去作とは違う点です。新入りと言いつつ恐らく捕まったタイミングは同じ?だと思うんだけど…どのくらいの日数の差があるんだろう。
「今日から俺がここのリーダーだ!」という龍我がすごくガキ大将感が出てて良かったです(笑)。我関せずブランコで遊ぶ大昇に絡みに行き、「龍我リーダー」と呼ばれて満更でもない様子。偉そうだけど“悪い子”じゃないんだろうなという印象を受けました。
その後大昇と龍我との押し問答があって(この時の大昇の口調や言動が子供っぽくて上手い)、実は大昇が戦争のせいで記憶をなくし子供返りしてるということが明かされます。

♪僕に聞くのかい?/岩﨑大昇

今まででいっっっっっっっっちばんこの歌を歌う説得力がある設定になってた!すごい!
僕に聞くのかい?の出だしは、

何故ここに来たのか
この僕に聞くのかい?
答えは簡単さ
あの空が青いから

なので、戦争で記憶をなくして子供返りしている設定ならこういうこと言いそう…って思えたのがすごく良かった。
この歌は例年日記係(新入り)が歌いますが、日記係が少年院に来ることになった理由はちゃんとあって、 “孤児院育ちで同じ孤児院のやつに親(顔も知らないのに)を馬鹿にされて腹が立ったから殴った”なんですよね。どれだけボコボコにしたんだ…。

ミュージカルにおける歌ってその時の心情を歌に乗せて伝えるもの(つまり台詞)だから、毎回設定と歌詞とがあまりにも合ってなさすぎて疑問しかわかない楽曲になっていたので、この子供返り設定よく思いついたな!?と思いました。

赤チームがわいわいやっているところに青チームがやってくる。刑務所に来る前にもやり合っていた相手だったことから喧嘩が始まり、看守たちが止めにきます。何かしらの因縁がありそうなことを匂わされる那須と浮所。
ここで大昇が「この人たち喧嘩してます!」って本当のことを言っちゃうのも子供返りしているからなのかな。子供って見たことをそのまま口に出しますよね。今までだったら一緒になって誤魔化そうとしてたと思うので新鮮でした。

♪俺たちは上等/美 少年 + 阿達、竹村、関、髙橋、堀口、木村

楽曲そのものは明るいけど(石投げられ♪で物が投げられるSE、足掬われ♪で転けるSEなど、曲中のSEもおもしろくて可愛い!特撮とかアニメのOPにこういうのあるな〜と思ってました)、囚人たちの境遇と合っていてすごく良かったし、歌詞を考えると色々考えてしまう~…。

正義なんて安っぽいものに かまって生きる暇はないさ
シャバのほうがよっぽど地獄

刑務所の外は食べ物が十分になく、盗むことでしか生きていけない世界だったので、“シャバのほうがよっぽど地獄”という歌詞はその通りだなと。

そういえばこの曲の振付、ひかるくんちょっとアレンジ(ひかるくん的にはブラッシュアップ?)してるよね?基本同じだと思うんですが、一部見たことない振付がある!!!と思いました。

ここで看守長が登場。プロローグの姿とは別人級に怖い!!!!(大魔王 by 博貴)
那須もブログで言ってましたが*4那須と看守長の間に色々ありそうだと言うことが匂わされます。
この時の大昇がすごく怯えていて、頭を抱えてしゃがみこんじゃうんですよね。単純に怖いだけなのか、何かがあるのか。
懲罰房行きを命令し、那須と浮所のRivalフラグを立てて去っていく看守長。。


4 懲罰房(夜)
懲罰房に入れられている青チーム3人。浮所と龍我も連れていかれてたので多分あの2人も懲罰房に入れられてると思うんですが、その描写はなし。大昇が食事を持ってくるのは喧嘩に参加してないから罰を受けていないからかな?と思いました。

戦争のせいで北と南が分断されそれぞれ環境も違っている、らしい。
北と南でも仲良かったのもいるのに、と案に浮所とのことを擦られる那須

大昇の記憶は刑務所の中のことだけで、そもそもなぜ刑務所にいるのかもわからない。「時々わけがわからなくなる」という台詞がありますが、これは元の人格が出てくる瞬間がある、ということなのかな。
家族のことを聞かれ、それが引き金になったのか大昇は酷い頭痛に襲われる。
そこから回想シーンになるのですが、プロローグの台詞なしで展開されていた部分の再現なんですよね。Jr.達も出てくるけど回想シーンだからか全員仮面(片目だけのやつ)つけてました。大昇の家が崩壊した時に上手側の壁に血が飛ぶ演出が怖くて震えた~…。

昔のことを思い出そうとすると頭が拒絶する、思い出がないと語る大昇に「思い出なら俺たちと一緒につくればいい」と、金指が日記を手渡します。懲罰房なのに何でそんなものがあるんだ…というツッコミは野暮です。

とはいえここの流れがすごく自然!
日記係って日記を書いている理由が特に示されないので“そういうもの”だとずっと思っていましたが、「記憶がないなら記していけばいい。日記に書いたことが思い出だよ」という流れになっていたのが良かったです。


5 懲罰房(その後)
一人だけ懲罰房から出され、看守たちに浮所と一緒にボイラー室で掃除しろと指示される那須(多分裏で浮所も一人だけ出されてるんだと思う)。お膳立てされるうきなすRival…。
ここで浮所と那須が、昔は一緒にプロのダンサーを目指した親友だったということが判明。戦争をきっかけに北と南に分かれてしまい、それぞれストリートギャングになったために仲違いしているという設定で、それはおたくが好きなやつでしょ…と思いました。


6 ボイラー室
ボイラー室と言えばRival、Rivalと言えばボイラー室。
浮所はまた俺たちの夢を叶えようよ!と必死に訴えかけるけれど、頑なに拒絶する那須那須の「夢をどうこう言えるのは平和な世界だけだ」という台詞が刺さったなあ…。

私達がエンターテイメントを享受できるのは“平和”な世界だから、ということをジャニーさんは舞台を通してずっと言っていたと思うのですが(だから戦争は絶対に起こしてはいけない)、那須の台詞でそれを思い出しました。コロナ禍で一度エンタメがストップしたことも記憶に新しいし、そもそもこの舞台を観劇できているこの瞬間も、日本が平和だからこそなんですよね。

♪Rival/那須雄登・浮所飛貴

すのすと版だと那須が岩本パート、浮所がジェシーパート。
Hi美版だと那須が優斗パート、浮所が大昇パートでした。

美 少年のコンビに詳しくない私でもうきなすの人気と需要は理解しているつもりなので、これは夢にまで見た組み合わせだったのでは…?おたくの命が心配になりました。

すのすと版では2015年と2016年はジャングルジムみたいなセット使ってやってました。何年かは忘れちゃいましたが(2017年と2018年かなあ…)、岩ジェのRivalでも2人が中央で向かい合って歌う(下から風が吹いてる)演出と、緑とオレンジの照明、あと後ろに二人のシルエットが映る演出があった記憶です。
2人は向かい合って歌ってるけど影は背中合わせ、大サビでは背中合わせだけど影は向かい合ってたんじゃなかったっけ、と岩本担の友人が言ってたのできっとそのはず、たぶん(笑)

とにかくうきなすのRivalの演出を見た瞬間、似たようなの見たことある!と思ったのが最初の感想でした。
ここは自分が実際にやってもらった演出を取り入れたのかな?もしかしたら当時その案をひかるくんが出してた可能性もあったりする???このあたりのこと聞いてみたいな~教えてひかるくん!

Rival後のやりとり、ひかるくんが初日ぶりにチェックしてきた*5、の後に観劇したら台詞(というかアドリブ?)が増えていたのが良かった!
ボイラー室にやってきた大昇が喧嘩している二人の仲裁に入り、2人にもみんなにも争ってほしくない・仲間だと思ってるからと気持ちを伝えます。


7 作業場

♪僕に聞くのかい?/岩﨑大昇


「3 ブランコの丘」では一番の歌詞でしたが、ここでは二番。大昇の歌に乗せて刑務所での作業場での出来事が描かれます。このシーン、廻り舞台を使って展開されるのが良いです。
いつも威張ってる龍我が実は蜘蛛が怖かったり、金指がブランコ直してくれて器用なことがわかったり(金指の過去の伏線)、食事の時間のやりとりだったり。パンが好き、パン屋になりたい、生まれ変わったらパンになってもいい!の夢を語る龍我が可愛かった(笑)

数少ないほっこりシーンとして千井野・渡邉看守仕切りで大縄跳び対決のコーナー。
勝った方は明日の作業免除、負けた方は罰ゲームです。罰ゲームって言っても腕立て伏せ5回とかだから優しいよね(笑)
そういえば前は突然バスケ始まってたな…今でもあれは何だったんだろう…と遠い目になります。。

場面は変わって大昇と藤井のシーン。
藤井は考古学の勉強をしていたということと、身体の弱い弟がいることが語られます。藤井の役は基本的に敬語だし、元々は裕福な家庭?興味のあることをちゃんと学ばせてくれるような家庭だったのかな?と思いました。

♪約束の歌~meet you again~/岩﨑大昇・藤井直樹

一日でも早く帰ると弟と約束した藤井。そこからの約束の歌がすごく良かった~!声の相性がいいのかな?2人の声のハーモニーが綺麗でした。
あと夜空の演出がものすごく良いです。電飾を上から吊るして星っぽくしてるのも良かったし(初日にドットイメージ!?って思ったけど違った(笑))、後ろのスクリーンにも星空が広がっていて、月が印象的な、幻想的でとても綺麗なシーン。

約束の歌は、えびキス版では塀の向こうに残してきた弟がいる北山と日記係(新入り)の戸塚が歌う楽曲なので、設定だけ見るとそれに近いなと思いました。
すのすと版はふっかと北斗(兄弟設定)、Hi美版はそれぞれ塀の外に残してきた弟がいる龍我と瑞稀が歌っていました。
どれも好きだけど、いつかここを出たら弟達も一緒に4人で会おうと約束を交わしたHi美版が個人的に一番好みだったかな。

弟を想う藤井を見て羨ましいと思いながらも、記憶がない大昇にとっては塀の中が全てで「家」なんだろうなと思います。だから「家」の中にいる人達は大昇の中ではとっくに家族になっているし、ずっとここにいたいと思うようになる。
大昇の心境が序盤から丁寧に語られているので観客も感情移入しやすいなと思いました。


8 刑務所の日常
ここにあたる場面がいまいちわからなかったんだけど、もしかしたら約束の歌の場面なのかも。


9 看守長の企み
大昇と藤井が夜更かししていたのを看守長に見つかり、連帯責任で罰を与えると言われる囚人たち。ここでも目つきと態度が気に入らないと標的になる那須。この二人の間に具体的に何があるのかがイマイチ読み取れないんだけど、単純に気に食わないだけ?

看守長が取り出した銃を那須に向けると、それを見た金指の様子がおかしくなり、そこで金指が元少年兵だということが明かされます(作業場のシーンの伏線回収)。
トラウマが発動した金指のお芝居が良かったなぁ…。

金指が自殺しようとしているのを間一髪で止める龍我。「戦争で罪もない人を殺してしまった、その時の感覚が消えない。もう消えてしまいたい」という金指の慟哭があまりに辛いです。

この世界の少年たちは、戦争のせいでろくに食べるものもなく盗みを働いた結果塀の中にいるので、「毎日食事ができる」ということが当たり前じゃない環境だったわけで。
普段の私達の生活でも、嫌なことがあったり落ち込んだりすると美味しいものを食べて元気を出そうとするし、特別なことがなくても美味しいものを食べて幸福感を味わうことって少なくないと思います。
龍我の夢をパン屋にしたのは、『食べることは生きること』という、当たり前だけど一番大事なことを伝える役割を持たせたかったからなのかなと思いました。そんな龍我と、消えてしまいたいと言う金指が上手く対になっています。「パンを食べて美味しいと思う・明日も生きようと思えるパンを作る」という龍我の台詞には、『ありふれた毎日がどんなに幸せか』という意味も込められてるんじゃないかな…「生きていれば必ずいいことがあるって」の台詞もすごく良かった。

♪LOVE/佐藤龍我・金指一世

この流れでLOVEは反則!!!!
しかもバラードver.なのが泣かせにかかってると思いました(実際泣きました)。
途中から4人がきて、龍我と金指を見守ってるのもすごく良い。

すのすと版だとこの歌を歌ったのは2015年の初年度と、2017年の少年たちLIVEだけかな?初年度はジェシーと大我で歌っていて、あとショータイムでもやる予定だったみたいだけど本番ではやらなかったんですよね。WSはゲネの映像が流れたので残っていて(しかもみんな黒スーツだった)、これ歌ってなくない!?ってなったのも懐かしいです。なのでこういう形でこの曲を使ってくれたのが嬉しかったな…本当に名曲。

大昇にとっては敵とか味方とかなくて、シンプルに喧嘩してほしくない、みんなのことが好きだからずっと一緒にいたいと思っているので、そんな大昇を中心に徐々に赤チームと青チームが仲良くなっていくのが自然でした。


10 刑務所内某所
看守長の行動について疑問を持つ千井野看守。実は彼も生きるために米を盗んだことがあり、一歩違えば囚人側だったと告げます。
千井野の役、えびキス版の野澤看守ポジションですよね。囚人たちに気持ちを寄せる看守なのでおいしい役です。

藤井の弟が病気で手術が必要だという連絡が来ます。


11 夢の世界
ここはえびキス版の演出そのままでした。「おやすみ、おはよう、こんにちは」の台詞もだし、その後に続く台詞も大昇のキャラクターに合ったものになっているけど、戸塚の台詞と似ています。
日記を舞台中央のセリの上に置いて広げる→その下から赤チームが出てくる演出(床から出てくる布はない)や、後ろに幕が垂れていて、その奥に青チームが登場→赤と青でペアになってのダンスや赤と青の照明も同じです。すのすと版は初年度にこの演出があった、はず。

今回演出するにあたってひかるくんは過去作の資料映像を全部見返したと思うんですが、インタビュー*6でも「長くやらせてもらってきたからこそ残せる要素は残したい。変わってないと思う部分もあるかもしれないけど、残すべきと判断したからそうしていると感じてもらえたら嬉しい」と言っていたので、ここはまさにそのまま残すべきと判断したシーンだったんだなと思いました。


12 闇を突き抜けて
相変わらず喧嘩している囚人たち。この時も大昇は喧嘩を止めようとしていました。
看守たちに見つかり、そこで那須のベッドの下からハサミが出てきた、龍我も食料倉庫に忍び込んだだろうと疑い(というかもはや決めつけ)をかけられます。
弟が手術することになり、血液型が適合するのが自分だけだから外出させてほしいと藤井が訴えますが、看守長はここから出す気はない・ここで死んでもらったほうが社会のため・葬るために閉じ込めていると言う。

看守長の過去が明かされるのは今年が初めてなんじゃないかな?
関西版はわかりませんが、すのすと版初年度の室看守長は過去作と同様、とにかく痛めつけようとするキャラクターだったし、2年目からはエア看守長(cvあおい輝彦さん)だったから一方的に喋っているだけでそういうくだりがないんですよね。
博貴の出演は去年からですが、過去は語られていませんでした。

妻子を守るために出兵し、ようやく戦争が終わって戻ってきたら、囚人たちのような少年に妻子を殺されていて…という過去が判明し、看守長もまた戦争の犠牲者だったという本当に誰も救われない事態。。

平和な世界だったら、戦争が起こらなかったら。
囚人のみんなは犯罪を起こしたりしなかっただろうし、まっとうに生きていたはずなんですよね。生きていくために仕方なく犯罪に手を染めるしかなかった。
それは看守長も同じで、プロローグではあんなに幸せそうだったのに、戦争のせいで何もかもが壊れてしまった。看守も運良く窃盗がバレなかったから看守として過ごせているだけであって、普通だったら囚人側なんですよね。
登場人物が全員戦争の被害者というのが、今までになかった視点でした。実際に現実においてもロシアのウクライナ侵攻はいまだに続いているし、イスラエルの地上侵攻は秒読み状態です。もし今の日本で戦争が起こったら、自分も同じような状況になるかもしれないという当事者の視点を嫌でも突きつけられます。

看守たちに痛めつけられる囚人たち。
千井野がせめて…と思ってハンカチを差し出そうとして見つかりそうになり、引っ込める…のくだりも野澤演じた看守がやっていました。
ここにいても言いがかりをつけられて刑期を伸ばされる、いつか殺される、そうなるぐらいなら…と言って脱獄を決意します。

過去作の囚人たちは色々な理由から刑務所に収容されていましたが、犯した罪は罪なんですよね。いくら塀の中が気に入らないからと言って、安易に脱獄しようとするのはフィクションだとしてもさすがにそれはないでしょ…と思っていて。
今回は囚人たちも戦争の被害者で生きるために仕方なく…という前提があり、真面目に刑期を全うしようと思っていても理不尽に伸ばされてしまうことがわかってしまった。それなら…と追い詰められて脱獄しようとするのも納得できたのが良かったです。

あと、Jr.扮する囚人たちが看守長に刑期を短くしてやるからとそそのかされて監視していたことを告白しますが(那須や龍我を陥れたのも、藤井と大昇のことを告げ口したのもそうだった)、このくだりがあったのが個人的に大きかったです。自分が悪かったことを認めて謝れる子達なんだと思ったので(看守長に問い詰められてる時も後ろで怯える芝居をしていたりと細かい)、やっぱり根っからの“悪い子”はいないのだと思いました。

そういえばこのシーンの背景、映画版の舞台だった奈良少年刑務所ですよね。見慣れた背景で懐かしかった!

♪闇を突き抜けて/美 少年 + 阿達、竹村、関、髙橋、堀口、木村

闇を突き抜けての出だしは

閉ざされた世界 ここにいたくない
逃れるために 自由のために 命を賭けていい

ですが、この曲が「外の世界へ!」の台詞で始まるのがあまりにも良すぎたし、こんな導入の仕方があったのか~~~~!!!と唸ってしまいました。

サブタイトルの『闇を突き抜けて』についてひかるくんは、「劇中に流れるこの曲が全てだと思う」「しっかりとしたパフォーマンスを見せることで今の色々な闇を少しでも晴らせたら」とインタビュー*7で言っているのですが、ひかるくんはこの楽曲に希望を込めたんだな…というのが今回の闇突きを観ての一番の感想です。

すのすと少年たちのときは、闇突きって割と突然始まって突然終わっていたので、パフォーマンス自体はすごくかっこいいのに情緒がないんですよね…(笑)闇突きの後に「俺たちはどうやってストレス発散したらいいんだよ!」的な台詞があった年もあったし、個人的に怒りを昇華させるイメージが強い楽曲でした(ジャニワでも闇突きはやるけど叫んでるイメージがある)。

2022年の少年たちは、闇突きの後に脱獄しよう!の流れだったと思うので、やっぱり勢いのままに怒りの感情を爆発させるイメージが強くて。

でも今年は、脱獄しよう!の後に闇突きなので、順番が逆になっています。
流れを少し変えるだけで楽曲の印象がこんなにも変わるんだ!?と思ったし、怒りではなく希望を感じられる構成になっているのが本当にすごい。

追加された二番は囚人たちの怒りや決意を表した歌詞になっていました。
廻り舞台の上でのパフォーマンスがすごくかっこよかった~滝沢歌舞伎2018でやった蒼き日々を思い出す演出。

闇突きのパフォーマンスの後にも「闇を突き抜けて外の世界へ!」という台詞があって、この台詞も「暗くて長いトンネルの先に見える微かな光を目指す」のイメージだし、ひかるくんが言っていた「闇を晴らせたら」というサブタイトルに込めた想いがちゃんと感じられる終わり方になっていたのが本当にお見事。

闇突きの間奏で人のシルエットと目のアップ、格子に手をかける手の映像が差し込まれていたのがゾッとしたし、あと一幕の終わり方も、牢屋が閉まる音とともに紗幕に牢屋が映し出されたのがものすごく印象的で、細部までのこだわりが感じられました。


◆幕間
幕間は30分。幕間って気が抜ける(というか気を抜く)時間ですが、その間に水が滴る音や風の音、コツコツ…という足音、扉を叩く音、錆びついたドアがギギギ…と音を立てて軋む音(劇場内の提灯が音に合わせて点滅しているのがツボ(笑))が鳴るので、否が応でも舞台の世界観に引き戻される演出が施されています。
Hi美の時は幕間がどうだったか覚えてないのですが…びっくりしなかったからなかったのかな?
こういった演出は滝沢歌舞伎でもやっていて(ZEROよりも前から)、二幕の世界観を思わせるような音が流れていました。鼠小僧の時は犬の遠吠えとかふくろうの声がしていたような?江戸の街の夜っぽいな~と思った記憶があるし、義経の時は平泉の山の中をイメージした音が流れてたと思う!と友人が言っていたので、きっとそういうことを踏まえた演出をしたんだろうなと思います。


今年は主演が美 少年だけということもあって出演者が例年よりも少ない分、メインのキャラクターについてしっかり掘り下げられているのが良いです。
出演者が多いとどうしても設定が雑になってしまう役も出てくるし(去年の藤井とかそうだった印象)、見せ場を作ろうとして流れが悪くなることもあると思うのだけど、今回は6人だけだし、それぞれの見せ場がストーリーにうまく組み込まれていたのもすごく良かった。あと、Rival・約束の歌・LOVEを歌うペアが、“塀の外に出たらまた夢を追いかけたい・やりたいことが明確な子”と、“夢を諦めてしまった・夢が持てない子”という対の関係になってるなと思いました。


長くなったのでひとまずここまで!
二幕とショータイムについてはまた改めて。

*1:Stage fan vol.31

*2:パンフレット参照

*3:ウチにおいでよ 2023.11.6参照

*4:美Days 那須雄登 2023.10.11参照

*5:すの日常 岩本照 2023.10.11参照

*6:STAGEnavi vol.84

*7:STAGEnavi vol.84、Stage fan vol.31